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Breve Intermedi(短編・再会後)

グラン・パルティータ 第五話

 ←グラン・パルティータ 第四話 →今日のらららクラシックは、ピアソラ「リベルタンゴ」だよ~♪
 日中は二十度を超える時間も多くなり、例年より暑くなりそうな夏が近いことが感じられるウィーン。カン・マエはいくつかの客演の仕事が終わり、昨晩は遅くまでかかって企画を練り終えた。
 彼は朝からオフィスでアーサー・ヤン・ハーロウやほかのスタッフに、細々と説明をしたところ。ここからは、彼らに任せて数日休みを取るつもりでいる。ルミの滞在は限られているので、まとめて仕事を片付けたのである。
 

Wolfgang Amadeus Mozart:Serenade No.10 “Gran Partita” 5

 
 幸いなことにトゥ・ルミの大学院の授業は教授の都合で休講なので、予定を延ばして滞在できることになった。ルミのパソコンにその知らせが届くやいなや、すぐにカン・マエの携帯に宛ててメールした。

 それに返ってきた返事に、ルミは目を疑った。「忙しい」とたった一言。
 そんな返信する暇があるなら、「それは良かった」とかもっとましなことを打てばよいのに、と行動の矛盾に不機嫌な顔 になったルミだが、すぐにカン・マエから次のメールが届いた。

「冗談だ。忙しいなら返信なぞするか。まさか、怒ったりはしなかっただろうな」
と、書かれていてルミは心底呆れた。きっと相当暇なのだろう。
 
 そう思っているところに、ドアの呼び鈴が鳴る。

 いそいそと出ると、そこには今メールし合ったばかりのその人が立っていた。ルミは嬉しさ半分、拗ねた顔で彼を迎える。

「もう、先生ったら!近くだったのならメール打つ間に家につくじゃない!」

 ルミのむくれた顔、特に頬の丸みに、カン・マエはニヤリとした。

「とにかく、滞在が延ばせるんだな、それなら何か計画するか」

 ルミはその言葉に、パッと笑みが浮かんだ。

「本当に?」

 カン・マエはルミのその単純さを愉しみつつ、ほんの少し眉根を寄せて言った。

「まだちょっと何とも言えんが、明日になったらはっきりするだろう」

 いずれにしても、予定より長くいられることで嬉しさいっぱいのルミだ。
  
 
 カン・マエはスーツから普段着に着替え、ルミの用意した軽い昼食を取った。食後はソファに座ってエスプレッソを飲みながら、いつものように本を読み始めた。ルミもその傍らで大学院の課題で、読まねばならない本を開く。

 ルミがリピートでセットしたCDは、先日のチャリティコンサート以来お気に入りのモーツァルト作曲セレナード第十番「グランパルティータ」。四種類の木管にとホルン、それにコントラバス。先日のチャリティコンサートで十三人の奏者が、伸びやかな表情で息を合わせて演奏していたことが、ルミの脳裏に甦る。

 セレナードとは、元々の意味と同様に、今の時代にも一般的な言葉としては、恋人や女性を称えるために演奏される楽曲、あるいはそのような情景のことを指して使う。音楽史においては、形や意味合いの変遷を経ながらも、曲調はやはり緩やかで優しく、軽やかなものが多い。 
 ハーモニーのバランスの素晴らしさに指揮者の彼をして、このCDは名盤だとこころから思った。ルミの淹れたエスプレッソの香ばしいにおいが漂うなか、難解な理論が展開する本も何とか読み進められた。
 
 CDは七楽章約五十分ほどの演奏が終わり、先頭に戻った。
 午後の一番気温の上がる時間にさしかかった。カン・マエは昨晩遅くまで起きていたこともあり、飲み干したエスプレッソの効果もなくなってきたらしい。ルミは退屈な本とスィーツで満ちた胃袋が集中力をもたなくさせた。

 二人はいつの間にか、もたれかかりお互いの体温も手伝って寝入ってしまった。

 モーツァルトの調べに包まれ、午睡のなかにいる二人の表情は幸せそのものである。
 
 二巡目が終わる頃、ルミは膝に重みを感じて目を覚ました。カン・マエは意図してか自然にか彼女の膝を枕に、熟睡中である。
 ルミはその寝顔を見て、クスリと笑った。
 いつかソクランの指揮者室で、オットマンつきのリクライニングチェアで昼寝をしていたときのことを思い出したからである。寝顔に彼の優しさを見つけたあのとき、まさか彼の恋人になるとは、思いもしなかった。
  
 グランパルティータは三楽章に入った。
 柔らかく穏やかな伴奏から始まる。そして「神の声」のようなオーボエ、引き継ぐクラリネットの音色は、ファゴット、バセットホルン、コントラバスの深い響きに支えられて、柔らかく優しく流れていく。

 やはり、こんな瞬間も奇跡の一つに違いない、とルミは思った。特別なこともなく、ただ過ぎていくひとときが、奇跡なのだと。

 カン・マエは、殻にこもって孤独を友として生きようとしていた男だったのだ。そんな彼が、今はルミに無防備な姿を晒して彼女に身を預けるようにして眠っている。

 グランパルティータは平凡のなかにあるこんな奇跡を讃えていると、 彼に笑われてもルミはまたそう主張するだろう。

 ルミはカン・マエの頭をそっと撫ぜながら、ふっとため息をつきそして、誰にも見せたことのない慈しみと愛に満ちた微笑みを浮かべた。 



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