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giorni (番外)

バッハのシシリエンヌ 2

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このお話に出てくる撮影中の日本のドラマについて。
タイトルは「二台ピアノのためのコンチェルト」。
タイトルどおり、二台ピアノとオーケストラの曲を演奏することになっていて、指揮者とピアニストが女性ピアニストを取り合う、分かりやすい三角関係のドラマ、あまり内容は関係ないのですが一応そんな感じで考えてみました。
オリキャラもどんどん出てくるだけでなく、今回は劇中劇ってほどではありませんがドラマが少しだけ関わっています。

オリキャラの説明です。

俳優・伊都谷佑介はこのドラマの指揮者役。
大河ではないけど大河よりも力を入れたような感じのNHKのドラマで主演していたあの方を想定していて、名前をちょっと変えています。今調べましたら、身長はほぼミョンミンさんと同じですね。
このSSの終わりの方にちょっとだけ出てくる彼の妹は、このNHKドラマで妻役だった女優さんってことに。美形の兄妹ですね~。

女優・仲道由紀恵は、ワンレンのストレートの長い髪が素敵な「きれいなお姉さん」に、ピアニストの仲道郁代さんのイメージも足しています。二人の男性から迫られる魅惑の女性ピアニスト役。

そして、ルミが大好きなドラマで検事役をしていた木村栄作(キムサク)は、この新作ドラマでは仲道由紀恵とともにピアニスト役です。



J. S.Bach:Sicilienne 2/5


それから二週間ほどした夏の光が眩しいある日。
シーズンオフでミュンヘン・フィルの仕事はほとんどないカン・マエは、光をシェードで調節した書斎で知人のバイオリニストのためにリサイタルのパンフレットに載せる原稿を書いていた。

ルネッサンス期の声楽曲がほどよいボリュームで流れているのだが、曲の切れ目でしゃくりあげるような声が耳に届いて、彼はぎょっとして椅子から立ち上った。
カン・マエは不安な気持ちを抑えながら行ってみると、ルミがリビングの大きなソファに座り肩を震わせる姿が目に入った。

しくしくと泣き続けるルミの後ろ姿に、彼は言葉が浮かばず呆然と立ち尽くした。
悪いことがあったに違いなく、肩を落とし涙を拭う細い手がとても悲しく映る。彼は……今彼として唯一できること、彼女の隣に座って左腕を彼女の華奢な肩に回しそっと抱き寄せた。

ルミは更にひとしきり泣き、感情が納まると彼に説明した。
「おばあちゃんちの猫が死んじゃって……。」
祖父母の家の老病コッスニが急死し、特に祖母は嘆き悲しんでいてルミは電話でずっと話を聞いていたのだ。カン・マエはルミのこんなに悲しそうな顔を見るのは初めてであるが、猫とわかって幾分安堵したのも事実である。
しかしそれが間違いであることをすぐに理解した。
ルミにとってルミの祖父母にとってコッスニは家族も同然の存在であり、祖母が気落ちしてただでさえ崩しがちな体調に影響しないかとても心配なのである。

カン・マエは眉を寄せて小さくため息をついた。
ミュンヘンにさえいなければ韓国にいたならばすぐに駆けつけることもできるのに、それが叶わないのは自分のせいだ。どうしたらいいのか……、カン・マエはルミを抱きかかえ今度はあやすように背中を何度もさすった。


それから数日後。
リビングでカン・マエはグラズノフの交響曲第五番の総譜を広げていた。

テーブルの上に置かれたエスプレッソの良い香りが漂っている。彼は一口含み、ゆっくり味わっていた。
ルミが声をかける。
「先生、それ前に迷っていた曲ね?」
「ああ、覚えているのだな。私が迷っていたのではないが。チャイコフスキーの五番かグラズノフの五番か主催者が決めかねていたんだ。人気のある有名な曲もいいが、グラズノフのほうは知られざる名曲だ。日本にはたくさんのオーケストラがある、クラシックファンの層も厚い。だからむしろ演奏機会の少なかった曲のほうが良いと私が推したとおりに決まったらしい。」
カン・マエは説明を終えると、再びページをめくり曲を頭に描きはじめた。
指先で拍子をとったり、左手を動かして曲想をイメージしているようだ。

そうして午後の時間が穏やかに過ぎていこうとしたとき、家の電話が鳴った。
ルミが出て相手に折返しの電話を約束して切った。

時間をおいて彼は折り返し先である音楽事務所に電話をかけた。
ルミは日常会話程度のドイツ語はできるようになっており、彼が何かを断ろうとしているらしいことは分かる。

カン・マエが電話を憤然として電話を切った様子に、ルミは神経を逆なでしないように訊ねる。
「先生、何の電話だったんです?」
「日本のドラマ撮影に協力してほしい、と。指揮の指導をする予定だった者が、急病だそうだ。しかし、なぜ私がよりによってあのドラマの……。」
「え?先生、あのって?何ですか?」
ルミはくるくるした大きな目で、彼の次の言葉を待っている。
こんなふうに、じっと自分を見つめるルミの純粋無垢な表情を見ると、たかだかドラマに出てくる男に彼女が気を取られたからといって、くよくよ考える自分が情けなくなってきた。

「ああ、おまえがこの間観ていた日本のドラマに出ていた男、彼が出演するドラマで指揮の指導を急に頼まれた。」
「でもなぜ先生が?」
「指揮者役は日本語と韓国語を話すそうだ。しかし、私がそんな真似事の指揮の指導をしなければならんのだ。ああ、そうだ、例の男、キムタックだったか?」
ルミはクスリと笑って言った。
「キム・タックは韓国のドラマの主人公ですよ。私が観ていたのは日本のドラマ。キムサクは日本の有名な俳優ですよ、先生。」
「指揮者とピアニストが二人出てくる話らしいぞ、何でも三角関係の話だとか……。なんともまあ、単純な人間関係だな。」
彼は面白くなさそうに言った。
「あ、仲道由紀恵さんも出るドラマね。私彼女のファンサイトをときどき覗くから……。新しいドラマの撮影がヨーロッパで行われるのは知っていたけど、あー、そうなんだ、キムサクのドラマのことだったのねー。それに先生が関わるの?すてき!」

嬉しそうなルミにカン・マエは複雑だ。
そういえば、一度を観終えたといってたのに、あれからあの「ヒロイズム」とかいうドラマをルミは繰り返し観ているのだ。
あんな男のどこがいいのかと聞けばいいようなものだが、真顔で「ああいう人が本当は私の好みなの」と言われたらどうしたらいいかと躊躇してしまう。
一ファンなのだろうから、どうということはない。分かっていてもカン・マエは平静ではいられないのだが、それを認めることもできずモヤモヤするばかりである。

「先生が、キムサクに指揮のやり方を教えるの?」
「いいや、彼はピアニスト役だ。私が指導を頼まれたのは彼のライバル役のほうだ。」

ルミはキムサクファンの従姉に彼の出るドラマにカン・マエが関わることを知ったらどんなにか喜ぶだろうと思い、目を輝かせる。そして、ルミは「ヒロイズム」のヒロイン枡たか子だけでなく、仲道由紀恵も大のお気に入り、ルミは日本のドラマと女優たちにに興味と関心を寄せていた。
「先生、それを断ろうとしていたのねー、勿体ないな。」
「何がだ。私はちっともいいとは思わんが。」
「仲道由紀恵さんきれいだろうなー。」

キラキラした目で嬉しそうに話す妻の顔を見ながら、彼は考えた。
コッスニが死んでしまってから、頻繁に韓国に電話をしているルミ。
切った後ため息を漏らしている彼女をうまく慰められずもどかしい思いをしているカン・マエは、少し間を置いて言った。
「指揮者役の指導、引き受けるか。おまえ、撮影現場に行きたいか?」
あんなにはっきり断ったのに、とルミは不思議そうな顔をした。
「行きたくないのか。」
「い、いえ行きたいです。」
「では引き受けるとしよう。そのかわり、だ。」

彼は何か思いついたようだ。
何?といいたげな表情でカン・マエを上目づかいに見るルミの傍に立って言った。
「その、あれだ、腕の動かし方とか、細々した日本語を教えてくれ。」
「え?その人、韓国語がわかるんじゃ……。」
「日本語で言ってやったほうが親切だろう?」
「先生いつからそんな優しい人になったの。まあ、そうね、そのほうがうまく伝わるわね。早速、今から?」
「ちょっと待て。袖が邪魔だ。筋肉の動きもあるからな。」
彼はルミのカットソーの裾を上げ始めた。
「え?」
ルミが目をぱちくりしている間に、彼は手際よく彼女をスリップ姿にしてしまった。
「本当にこのほうがわかりやすいの?」
真顔で言うルミを見て、カン・マエはたまらず笑い出した。
「おまえは本当に面白い……。」
そう言うと彼はルミの頬を両手ですくい上げた。
「先生、日本語は……。」
「後でいい。」
彼は淡々と言うと、きょとんとしているルミの半開きの唇に自分の唇を重ねた。


カン・マエはルミを伴ってウィーンにやってきたのは、夏の盛りが終わったころ。秋のコンサートシーズンの前のまとまった休みを取るのに格好の時期だ。

ウィーン楽友協会のリハーサル室の一つ、フルオーケストラが二つ分入る程度の大きさでピアノが二台置かれていた。壁材は明るい茶色で、ドアの上部から上の位置には青みがかった白でペイントされていた。後からピアニスト役の俳優が来て動作の練習をするらしい。何人かのスタッフがリハーサルの準備など、忙しそうに動き回っていた。

ベーゼンドルファーから少し離れたところに立って、指揮者役の伊都谷佑介はCDに合わせて腕を振っている。
カン・マエはドラマの監督と通訳と並んで座り、ルミは少し離れたところに見学者として座っていた。
指揮の場面は手元だけ移す場面は吹き替えになるが、オーケストラとともに映る場面も出てくるので、そこだけは練習が必要だ。
カン・マエと伊都谷は同じぐらいの身長で、伊都谷のほうが痩せている。二人の立ち姿はもし東洋人男性が好みのハンナが見たら垂涎ものだろう。
話している言葉は英語だ。指揮者役は彼で間違いないのだが、韓国は話せず長年イギリスに住んでいたため英語が堪能であるのに間違えられて伝えられたらしい。

彼は事前にビデオを見るなどして十分研究してきたらしく、カン・マエがアドバイスをするとすぐに理解し修正した。
いくら演じるプロであっても指揮者としては当然素人、簡単に真似はできないだろうと思っていたカン・マエは、予想以上の出来に「よく研究している」と褒め言葉を口にした。

ルミはカン・マエがオーケストラメンバーに向かう時と、あまりに違う雰囲気に驚くばかりだ。
彼は音楽のプロでない相手には、誰であれ厳しいことはめったに言わないだけのこと。
ただ、彼自身場違いに感じ落ち着かず早々に立ち去りたいところだったが、ルミはきっとあのドラマの主役の男に会いたいだろうと思い、監督の細々とした質問はもちろんのこと世間話にも付き合っていた。

ドアが開いて見目麗しい男女、ピアノコンチェルトを弾く木村栄作と仲道由紀恵が入ってきた。スタッフたちの表情が浮き立つ。
しばらく監督と役者たちは打ち合わせをしていた。

台本を見て何事か考えていた指揮者役は、カン・マエに近づいて言った。
「また少しわからないところが出てきまして……教えていただけますか?」
二人は左手の動作について話し始めた。

女性ピアニスト役の仲道由紀恵と監督は何か意見の相違があるらしく、二人で話し込み始めた。

もう一人のピアニスト役、キムサクはスタッフたちと話をしている。
彼は場の空気を盛り上げるのが上手いらしく、冗談を言っては皆を笑わせていた。

ルミはそんな様子を後から従姉に話すためにも、じっと見ていた。
人の視線に慣れっこのキムサクが何を思ってか、自分のほうを見ていたルミに向かって歩む。ルミはドキッとして腰かけている椅子から立ち上った。
キムサクは柔らかい笑顔でルミに声をかけた。

指揮者役の男にアドバイスをしていたカン・マエは、キムサクがルミに話しかけていることに気が付いた。
ルミのやつ、何だ赤くなって下向いているじゃないか……。
そして取り囲む人々の笑い渦のなか、顔を上げた彼女はここ最近見せなかった初夏のひまわりのような笑顔を向けている。
表情が険しくなったカン・マエに、指揮者役は何か怒らせることでもしたのかと気を揉んだ。
「あの、カン先生、私振り間違えましたでしょうか?」
伊都谷佑介は丁寧に彼に訊ねた。
カン・マエは「否。」と一言で否定し、ルミやキムサクたちが視界に入らぬよう背を向けて、この細身の指揮者役に腕の振り方を丁寧に説明し始めた。
カンの良い伊都谷は彼がなぜ険しい表情になったかなんとなく理解し、ほくそ笑んだ。

カン・マエの携帯の着信音が鳴った。
マクダウェル音楽事務所のスタッフからの急ぎで込み入った話のようなので、彼はリハーサル室を出て話し始めた。

それから三十秒もしないうちに、伊都谷佑介はルミの傍らに立って声をかけていた。
「あなたがマエストロの奥様ですか… …?
僕はあなたにもっと早く、マエストロより先にお逢いしたかったです……。
あなたのその美しい姿、優しい目……、一目で惹きこまれてしまった。
でも……無理ですね。マエストロのあなたを見る眼力の熱さには敵いませんから。」
キムサクと打ち合わせをしていた仲道由紀恵は、ぎょっとした顔で伊都谷とルミのところへつかつかと歩いてきた。
「伊都谷さん!なに言ってるの? キレイな女性とみると必ず口説く癖は健在ね~ 」
伊都谷をたしなめ、由紀恵はルミに丁寧に言った。
「マエストロの奥様ですね?ぶしつけに失礼しました、共演者として謝ります。あんなに素敵なマエストロと伊都谷さんなんて比べものになりませんよね。もうあなたって人は……。 」
仲道由紀恵の真剣な表情に対して、伊都谷は薄笑いを浮かべ大袈裟なとでも言いたげだ。
そしてこの細身の指揮者役は、こともなげに言った。
「悪いかな?美しいものをほおっておけない性格でね……。」





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